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日本経済の「正常化」がもたらす大きな投資のチャンス

2026年6月15日

世界に追いつくために数十年にわたって急成長期を経た日本の経済は、1990年代には資産バブルが弾け、生産年齢人口が減少に転じたことで停滞期に突入しました。名目ベースの GDP 成長率は20年近く伸びず、日経平均株価は2012年末の時点でも 1989 年のピークを 75 %近く下回っていました。

この状況を打破するために2013年初めに日本政府が打ち出した対策、「三本の矢」には次の点が含まれていました1

1. 年間インフレ率を 2 %に抑えるための大幅な金融緩和政策

2. 国内消費と投資を支援するため、公共事業とインフラプロジェクトを通じた短期的な財政刺激策

3. 日本経済の競争力を高め民間投資を活発にするための様々な規制改革

2013 年のこの改革が大きな転換点となってインフレ率がプラスに転じ、名目GDP 成長率も回復し始めました。これ以降に行われた労働市場、企業統治、金融、法律、安全保障などに関する改革とも相まって、海外投資家を含む多くの投資家に対して日本の投資機会を切り開く原動力となりました。

日経平均と名目 GDP

 

出典: 内閣府、ブルームバーグ

日本のコアCPI インフレ率*

CPI は生鮮食品とエネルギーを除く

*税率変更の影響を弊社で調整済み、出典:総務省統計局

日本企業のトップからの変化

マッコーリーグループ・ジャパンカントリーヘッド兼コモディティーズ・アンド・グローバル・マーケッツ統括本部長である渡邊 琢二は「過去10年間に行われた企業改革では、透明性、資本効率、リスクマネジメントに大きな焦点が置かれ、日本企業の投資方針やリスクに対する考え方が変化しました。」と述べています。

マーケットボラティリティーに対する理解も広まり、企業の投資方法も変わってきています。

「近年のエネルギー価格の上昇、円安、地政学リスクの高まりを背景に、リスクマネジメントは政府や企業にとって非常に重要な優先事項となりつつあります。」と渡邊は続けます。「この意識の変化はこれまでの投資家の期待を遥かに超えるもので、多くの分野で非常に説得力のある投資チャンスを作り出しています。」

この意識の変化こそが株主にとって真の価値を生み出し、利益と株式評価を押し上げて世界の資本を惹きつけているのです。日本企業に対する海外からの投資は 1990年代後半から10倍に増え2、日本企業の買収は記録的なペースで進んでいます3

この買収の波は、近年東京オフィスを拡張しつつある世界的なプライベートエクイティファンドやグローバル資産運用会社が牽引していますが、日本企業自身も波に乗っています。

「日本の大手商社の中には、資本を意図的に配分し株主利益を意識した設備投資を行うことで、多くの価値を創出することに成功した例もあります。」と渡邊は言います。「その中で企業は為替や金利のリスク管理をより重視するようになっています。効果的なリスク管理によって長期的な成長を支える可能性があります。」

企業評価の向上とともに、日本の戦略的なエネルギー計画、急速な高齢化による労働力不足、デジタル改革の加速といった構造的な変化に対処する必要性が投資を後押しします。日本はまた、次なる経済成長期に向けて半導体、AI、データセンターといった分野でも巨額な投資を呼び込んでいます。

 

日本の将来を握るエネルギー保障

日本にとって、エネルギーは最も重大な経済的課題の一つです。日本は石油や天然ガスを輸入に大きく依存しているため4、地政学リスクが高まっている状況の中、危機感が高まっています。

日本の電力需要は長い間低い水準にありましたが、近年は増加傾向にあり今後10年間で 5.3 %増えると予測されています。その主な要因は、データセンターや半導体製造の拡大、産業の電化進展に伴う産業用需要の18.3 %の増加です5

データセンターの消費電力だけでも、2024年は 19 TWh だったものが、2034年には 66 TWh へと3倍以上に増加すると言われており、10年以内には日本の一般家庭 1500万世帯から1800万世帯に相当する電力を消費する計算になります6

2025年に承認された「第7次エネルギー基本計画」は、カーボンニュートラルの達成、エネルギー安全保障の強化、経済的競争力の確保を両立させながら、拡大する電力需要を満たすための方針を示しています。再生可能エネルギーを日本の主要な電力源(電力構成の40%から50 %) に据え、原子力エネルギー (7% から20 %へ拡大) も利用しながら、火力発電については依存度を下げながらも脱炭素化を進めるとしています7

日本の第7次エネルギー基本計画における電力構成

出典:経済産業省

「再エネのシェアが今後も拡大する中で、エネルギー安全保障、競争力、気候変動への対応を同時に達成するためには、ガス、水力、原子力、蓄電池などを含めた柔軟な供給体制の構築がエネルギー供給の安定にますます不可欠になるでしょう。」と語るのは、日本でコモディティーズ・アンド・グローバル・マーケッツの電力ストラクチャリングチームを率いるマシュー ジョーンズです。

政府の主要政策であるグリーントランスフォーメーション(GX)戦略は、今後10年間で官民合わせて150 兆円(約1兆ドル) の投資を通じて日本のエネルギーセクターの転換を転換することを目指しています。この投資は、クリーンエネルギーの利用拡大や建物の省エネ性向上などによる電力供給と製造プロセスの脱炭素化と並び、この資金はデータセンターの共同利用とクリーンエネルギー電源のコロケーション(近接立地)を可能にする送電網インフラの整備に使われます8

蓄電池エネルギー貯蔵システム(BESS) は、日本の電源構成において再生可能エネルギーの導入比率をさらに高め、データセンター需要の増加を支えるために支援が拡大している分野の一つです9。 2023年12月以降、少なくとも26 億ドル相当の投資が日本の蓄電池プロジェクトに投入されています10

マッコーリー・アセット・マネジメント(MAM)が出資する Eku Energy は現在、日本国内で5.3 GWh に上る18以上のプロジェクトを運営・開発中です11。そのうちのいくつかを紹介します。

  • 宮崎県宮崎市広原町の30 MW/120 MWh のBESS プロジェクトは年内に稼働予定で、東京ガスとの長期契約を通じ20年間にわたって電力を供給する予定です12
  • 福岡県直方市の 2 MW/8 MWh BESS プロジェクトはEku Energy Japan が直接電力市場取引を行う初めての蓄電所となります13
  • 蓄電池産業を新たな産業の一角として確立することを目指した「徳島バッテリーバレイ構想」を支援するための覚書を徳島県と締結しました14
Eku Energyの日本で初めてのプロジェクト、広原蓄電所

BESS プロジェクトは、系統の柔軟性を高めることで系統への接続許可にかかる時間の短縮と電気料金の安定化に資するため、データセンターのように大量の電力を消費する施設の管理が容易になります15。つまりデータセンターの投資家に対し高い事業予見性と投資の確実性を提供することにつながります。

「近年の世界のエネルギー市場における変動により、投資判断を左右する要因は大きく変わりました。エネルギーのコストと安全保障が今や投資の意思決定の中核となっています。」とマシュー ジョーンズは言います。

「日本のデジタルや AI 需要の拡大は長期的な投資に見合う規模がありますが、それを引き出す鍵となるのは、エネルギー安全保障、正当な価格、脱炭素化の点でバランスが取れた提案ができるかどうかということになります。」

エネルギー価格の変動によるリスク管理の必要性が高まったことで、電力卸売市場での調達が増えています。日本の電力市場の発展とともに、大企業はリスクヘッジのために先物やオプションなどの手法を使ったリスク管理を行うようになりました。

「10年前は市場の流動性が低く、各地域の大手電力会社の限定的な料金プランが支配的であったため、企業が卸電力価格をヘッジする手段は限られていました。しかし、市場の自由化が進むにつれてスポット市場及び卸電力取引の拡大や金融リスク管理手法の普及により、企業はより長期で自社のニーズに合わせたヘッジ商品を活用し、電力価格の変動リスクを適切に管理できるようになりました。」

2019年に日本電力市場に参入して以来、マッコーリーは国内における主要なリスクヘッジプロバイダーへと成長してきました。東京に先物クリアリング営業チームを置く数少ない外資系企業として、マッコーリーは国内市場で培った豊富な経験とグローバルな専門知識を組み合わせ、電力価格の変動リスクや将来のエネルギーコストに関する不確実性の管理を支援する、クライアントのニーズに合わせたリスク管理ソリューションを提供しています。

さらにマシュー ジョーンズは次のように述べました。「信頼性が高く手頃な価格のエネルギーへのアクセスは、投資の原動力となって企業の成長とイノベーションを推進し、長期的な投資判断に資本を投入するために必要な安定性とオペレーションコストの抑制をもたらします。」

 

労働力不足が技術革新を促進

日本の人口は今やその43 %近くが 55 歳以上となり、生産年齢層が高齢層の社会保険や年金の重荷を背負っています。このような人口構成がもたらすプレッシャーが生産性を維持するためのデジタルやAIへの新たな投資を呼び込んでいます。

日本の人口の推移

生産年齢の年間成長率

出典:国際連合

日本はすでにロボットの製造やその産業利用で世界をリードしていますが、政府は物流や介護などの多くの分野の深刻な人手不足に対処するために、ロボットのさらなる普及を推進しています16

しかし、経済全体で自動化を進めAIの利用を拡大するには、増え続ける大量のデータを安全にハイスピードでリアルタイムに処理できるような革新的で信頼性の高いインフラを築くための投資を通じて、国内のデジタル基盤を強化する必要があります。

日本のサービスロボット市場の発展

出典:ブルームバーグ、富士経済

注:2024年とそれ以降の数値は予測

 

マッコーリー・アセット・マネジメント(MAM) は2024年に世界各国のインフラ投資家のコンソーシアムを率い、日本の携帯キャリアである楽天モバイルとの間で楽天のネットワーク資産の一部を対象とした戦略的なセール・アンド・リースバック取引を行いました。

この取引により、世界各地でこれまで以上に多くのデータの消費、創出、移動、保存が行われている重要な時期に、楽天モバイルがネットワークに継続的な投資を行うための資金が確保されました。これは20年以上にわたって資金と専門知識を駆使してデジタルインフラビジネスを築いてきた MAM だからこそ実現できたことです。

「日本では、投資家が強い長期ファンダメンタルズに支えられた様々なセクターの高品質なインフラプラットフォームに参画できるチャンスが増えています。 」と、マッコーリー・アセット・マネジメントで日本のインフラストラクチャーとプライベートエクイティを率いる井上徹が述べています。

MAM運用ファンドが主導するコンソーシアムを通じて実行されたこの取引により、楽天は1700億円  (12 億ドル) 以上の資金を調達_することに成功し、重要なデジタルインフラの運用管理権を保持しながらも投資家層を広げることに成功しました17

「日本企業が他国の企業と異なるのは、導入の必要性が非常に高いことです。」と語るのはマッコーリー・キャピタルのシニアアナリストである山科拓です。「労働力不足を補うための自動化を進めるには、フィジカルAIやITシステム、インフラへの投資が欠かせないからです。」

このプレッシャーが、従来の自動化の枠を超え工場、物流、ヘルスケア、運輸などの生産過程全体の再設計につながるイノベーションを進める力となっています。

このような投資の正当性は、電力、運輸、製造業セクターなどの旧式インフラや資産を含む既存の老朽化した資本ベースを刷新し近代化する必要性と、投下資本利益率の向上を求めるべき取締役会や経営陣への圧力の強まりなどによって強化されています。

日本の多国籍テクノロジー企業の多くは、すでに専門知識や既存の製品やサービスを通じて、企業がA Iや自動化技術から利益を得られるようサポートを行っています。

  • 創業100年を超える総合電機メーカーである日立製作所は世界規模の生産能力を活用して、機械や設備など物理的な資本材にAI ソリューションを組み込む導入を進めています18
  • ファナックや安川電機など工場の自動化や産業ロボットの大手企業は、既存の製造システムにA I機能を追加しています19
  • 村田製作所20 や TDK21 などの部品メーカーは世界各地のフィジカル AI やデータセンターの建設に貢献しています。
  • NEC22 や富士通23 などのIT企業は国内企業のAI システム導入に中心的な役割を果たしています。

AI セキュリティーとデータ主権に関する日本政府の新たな基準は、ハイパースケーラーがデータセンターを日本国内に建設することを支援しており、これまでに280億ドル以上の資本投入が約束され、49 箇所でデータセンターの建設が計画されています24

 

海外資本を待ち受けるチャンス

日本の次なる成長ステップは、一つの改革や特定の投資テーマ以上のものが原動力になっています。ガバナンスの変化、エネルギーシステムへの投資、テクノロジーと日本の人口動態の変化が相互に影響しあい、国内の資本の配分がより広い範囲にわたってリセットされるチャンスを生み出しています。

それは、企業の取締役会の投資リターン評価方法、テクノロジーや電力インフラに対する投資の緊急性、自動化やAIを通じて労働力やスキルの不足を補う企業に対するプレッシャーなどに表れています。

これらのつながりは、それぞれのテーマを個別に評価した時には見落とされがちですが、総合すると、資本配分のあり方が再定義されつつある市場が浮かび上がります。日本にはこれまでの歴史が示唆するよりも、グローバル資本にとってより広い範囲にダイナミックなチャンスがあることが見えてきます。

 

20年以上にわたって日本に根付いてきたマッコーリー

マッコーリーが2004年に東京にオフィスを設立して以来、私たちは資本市場、エネルギー市場、インフラと現物資産において深い専門知識を身につけ、日本国内および海外のお客様をサポートしてきました。

日本の構造的進化のペースが増すにつれて投資家と企業の関心が高まり、広く浅い投資から、世界のトレンドに沿った以下のような具体的な投資へと変化しています。

  • AIやデジタル化に関連するインフラ投資
  • エネルギー、電力市場のボラティリティの上昇に伴うリスク管理
  • 規制改革やガバナンスの変化が資産価値の再評価をもたらしている日本企業への投資

世界で最も重要な経済国の一つである日本を再編しつつある世界的な変化に対応でき、企業環境のローカルなニュアンスも理解できる企業こそが、日本の変革局面において競争優位性を発揮できる可能性があります。

 


  1. ‘The Three Arrows of ‘Abenomics’’, Government of Japan, https://japan.kantei.go.jp/ (Accessed 11 June 2026)
  2.  ‘Foreign investors buy most Japan stocks in 11 years on election high’, Nikkei Asia, 20 February 2026, https://asia.nikkei.com/
  3. ‘Japan’s takeover fears threaten record M&A boom’, Reuters Breakingviews, 7 April 2026, https://www.reuters.com/
  4. ‘Japan’, International Energy Agency, https://www.iea.org/ (Accessed 1 June 2026)
  5. ‘Japan’s takeover fears threaten record M&A boom’, Reuters Breakingviews, 7 April 2026, https://www.reuters.com/
  6. ‘Japan's data centre boom to drive 60% of power demand growth as US$28 billion hyperscaler investment reshapes grid’, Wood Mackenzie, 26 August 2025, https://www.woodmac.com/
  7. ‘The 7th Strategic Energy Plan’, International Energy Agency, February 2025, https://iea-etsap.org/
  8. ‘Overview of Japan's Green Transformation’, GR Japan, January 2023, https://grjapan.com/
  9. ‘Turning market hype into reality’, Institute for Energy Economics and Financial Analysis, 2 March 2026, https://ieefa.org/
  10. 'Japan scales up batteries but companies worry rule changes may curb growth’, Reuters, 9 September 2025, https://www.reuters.com/
  11. ‘Eku’, Eku Energy, https://www.ekuenergy.com/ (Accessed 1 June 2026)
  12. ‘Accelerating the global deployment of energy storage solutions’, Macquarie Group, https://www.macquarie.com/ (Accessed 1 June 2026)
  13. ‘Eku Energy Japan Commences Operations of the Kami-Tonno BESS’, Eku Energy, 22 April 2026, https://www.ekuenergy.com/
  14. ‘Eku Energy Japan Signs Memorandum of Understanding with Tokushima Prefecture on Regional Contribution’, Eku Energy, 27 November 2025, https://www.ekuenergy.com/
  15. ‘Key Questions on Energy and AI’, International Energy Agency, https://www.iea.org/ (Accessed 16 April 2026)
  16. ‘Robot Industry’, Japan Ministry of Economy, Trade and Industry, https://www.meti.go.jp/ (Accessed 1 June 2026)
  17. ‘Rakuten Mobile raises funds from Macquarie Asset Management-led consortium through leasing of mobile network assets’, Macquarie Group, 8 August 2024, https://www.macquarie.com/
  18. ‘Hitachi Launches Expanded HMAX Solutions Accelerating Social Innovation Globally Across Industries’, Hitachi, 6 January 2026, https://www.hitachi.com/
  19. ‘One in three Japan firms using or considering AI robots: Reuters poll’, Reuters, 21 May 2026, https://www.reuters.com/
  20. ‘Murata beats profit estimates as AI data-center demand strains production’, The Japan Times, 30 April 2026, https://www.japantimes.co.jp/
  21. ‘Japan’s TDK sharpens AI focus with smart glasses, data center parts’, Nikkei Asia, 7 January 2026, https://asia.nikkei.com/
  22. ‘IFS and NEC Accelerate Digital Transformation’, IFS, 16 January 2026, https://www.ifs.com/
  23. ‘Fujitsu’s Dual AI Deal: Claude for Defence & ChatGPT for Ops’, Cyber Magazine, 29 May 2026, https://www.cybermagazine.com/
  24. ‘Japan Data Center Market Investment Analysis Report 2026-2031: After Tokyo and Osaka, the Demand for Data Center Investments in Locations Such As Hokkaido, Kyushu, Nagoya, and Yokohama Will Increase’, Yahoo Finance Finance, https://finance.yahoo.com/ (Accessed 1 June 2026)