視点

少数派からメインストリームへ:アジアにおけるプライベートクレジットの成長

2025 年 12 月 15 日

プライベートクレジットはニッチな投資戦略から、今や世界的に機関投資家のポートフォリオの中核に成長しています。その中でも、特にダイレクトレンディングとインフラデット投資は、優れたリスクリターンと高い利回りが期待でき、ポートフォリオの分散化、そしてマーケットの変動にも耐えうるという点で注目に値する資産です。このような特徴は、マクロ経済環境の変化や新たな法規制の導入に対応しながらも安定収益を求めるアジアの投資家にとって特に魅力的といえます。

プライベートクレジットに対する関心が世界的に高まる中で、資金調達と投資家の参入という両方の意味でアジアの存在感が強まっています。これはアジアの投資家が革新的な投資手法を積極的に取り入れ、保険会社や年金基金のリスク管理が高度化していることを反映しています。本稿ではダイレクトレンディングとインフラデット投資の特徴、成長を支える背景、そしてアジアの投資家がこの戦略に注目する理由などについて探っていきます。

ダイレクトレンディングとインフラデット投資の比較

ダイレクトレンディングは従来のように銀行を介さずに中堅企業や大企業に対して直接融資を行います。変動金利の優先担保付き融資となり満期は通常5年以内です。投資家は流動性の低さや複雑さの対価としてプレミアムを得ることができ、対象分野はビジネスサービス、ヘルスケア、テクノロジー、消費財産業など多岐にわたります。

一方で、インフラデット投資は道路、橋梁、公共サービス、再エネプロジェクト、デジタルインフラなど大規模な社会基盤に対する融資です。通常これらの融資は長期間(最長7年)で有形資産を担保とした長期契約となり、法規制によって保護されることも多くあります。インフラデット投資のリターンは予測可能でインフレに連動したキャッシュフローが期待できるとともに、景気にあまり影響を受けない特徴があります。

主な相違点として次の点が挙げられます。

  • リスクプロファイル:ダイレクトレンディングもインフラデット投資も高度なリスク管理を行います。 ダイレクトレンディングはポートフォリオの分散化に役立つとともに貸し手に対する保護が手厚く、インフラデット投資は資産担保構造と手厚いコベナンツ、生活を支える重要な資産という特性があります。
  • 利回りと期間:ダイレクトレンディングは通常、有利な金利設定の変動金利資産で期間は短い一方、インフラデット投資は長期間にわたって安定したリターンが期待でき、一部は固定金利になります。
  • コベナンツ体系:インフラデット投資は多くの条項からなるコベナンツと担保保護が特徴ですが、ダイレクトレンディングは中堅上位から上位の案件ではより柔軟性が高くコベナンツ事項が少ないこともあります。

成長を支える背景

ダイレクトレンディング:規模の拡大と価値の発見

世界のダイレクトレンディング市場では、大手資産運用会社の運用資産残高が大きく増えるなど、市場規模が急成長しています1。この背景にあるのは次のような要因です。

  • 大手資産運用会社の参加:大手アセットマネジメント会社が銀行とのパートナーシップで、あるいは単独でレバレッジド・バイアウトやリキャピタリゼーションなどを含む大型案件に参加するようになっています。
  • 銀行業界の変化:世界金融危機後の規制により銀行によるリスクの高い、あるいは長期間のローン保有が制約され、銀行以外の貸し手に融資の機会が生じています
  • ミドルマーケット融資の価値:大型案件へシフトが進む一方で、ミドルマーケット融資は、貸し手の個別交渉が可能で高い利回りを確保しやすい環境が続いています。

インフラデット投資:分散化とメガトレンド

インフラデット投資はプライベートクレジットの中でも最も急速に成長している分野で、  Preqin2 によると2015年以降の運用資産残高は年平均23.1%も増えています。この成長を支えているのは以下のような要因です。

  • 分散化の効果:インフラデット投資は社債、株式、不動産など他のアセットクラスとの相関関係が低く3、ポートフォリオの分散効果が高いと言えます。
  • 3つの「D」メガトレンド
    • デジタル化(Digitalisation):データセンター、ファイバーネットワーク、スマートインフラへの投資が増加しています。
    • 人口動態(Demographics):都市化と高齢化に伴って交通、医療、公共施設の改善や強化などが必要になってきています。
    • 脱炭素化(Decarbonisation):再エネと気候変動に対応したインフラに対する投資が世界的に拡大しています。
  • 銀行業界の変化:銀行がリスクエクスポージャーを調整する中で、規制と貸し手の保護強化とともにノンバンク金融機関がインフラ融資における役割を広げています。

進化するアジアの資本環境

アジアは世界のプライベートクレジットファンドにとってますます重要な資金調達市場になっています。 Coller Capitalが行った2025年度の調査によると、APAC 地域の投資家の50%はプライベートクレジットへのアロケーションを増やすとしており、今後強いニーズがあることがわかります。4  この流れの背景として以下の要因が考えられます。

  • 安定した収益:プライベートクレジットによって安定的に得られる計画的なキャッシュフローは、変動の大きい公開市場においてアジアの保険会社や年金基金の求めるニーズに合致しています。
  • 増えるアロケーション:アジアの機関投資家はダイレクトレンディングを中心にプライベートクレジットへのアロケーションを着実に増やしてきていますが、インフラデット投資を含む実物資産や資産担保型の融資への分散化も進んでいます。
  • 法規制の整備:シンガポール、香港、韓国などの監督当局がインフラデット投資に対する優遇資本制を検討しており、ソルベンシー比率やリスクプロファイルの最適化を目指す保険会社などにとってはインフラデット投資がますます魅力的なオプションになりつつあります。

今後の見通し:プライベートクレジットの魅力

歴史的に高い金利水準が続いている中で、プライベートクレジットは良好なリスクリターンを維持しています。銀行業の縮小、インフラ分野のメガトレンド、法規制の整備などの構造的な背景がプライベートクレジットの戦略的重要性を一層強めているのです。アジアの投資家が投資を増やしながら分散化も進める中で、ダイレクトレンディングとインフラデット投資はポートフォリオの中核的資産として定着していくと考えられます。

マッコーリー・アセット・マネジメントは2012年より幅広い市場と多様なリスクプロファイルのプライベートクレジットを運用し確かな実績を築いてきました。私たちは専門知識とグローバルネットワークを活かし、価値の最大化と魅力的なリターンを投資家の皆様に提供しています。

マッコーリー・アセット・マネジメントの詳細についてはmacquarie.com/mam.をご覧ください。

 

出典

  1. PitchBook, 2024年8月
  2. Preqin, 2024年6月
  3. CFA Institute Research & Policy Center, Infrastructure Debt: Unlocking Investment Opportunities in a Transforming Economy, 2024年11月
  4. Fund Selector Asia, Survey: Asia investors plan to raise private credit allocations, 2025年6月