視点

上場インフラ株式戦略:脱炭素化の推進役
世界の炭素削減目標に合致する資産クラス
アンソニー・フェルトン、グローバル上場インフラ株式戦略ポートフォリオ・マネジャー

2021年11月17日

グローバル上場インフラ株式(GLI)への長期投資家として、当社のグローバル・チームは、このような長期的な取り組みが、上場インフラ株式の投資ユニバースにとって強い追い風であることを認識している。急激な変化が訪れる今後数十年において、どの分野で影響が生じるのか、詳細に検討してみるだけの価値はある。

2004年より上場インフラ株式に投資を行なっている一投資家から見て、世界の気候変動対策への解決策を講じるうえで、インフラ資産が果たす役割が重要であることは、以前から明白な事実だった。国際エネルギー機関の推定では、ネットゼロの達成に向けた貢献の約3分の2は、インフラ部門を通じた一次エネルギー源の電化と脱炭素化への投資によって為されるものであるという。

各国政府も脱炭素に向けた取り組みを進めており、米国で2020年後半に成立した9,000億ドルの景気対策法案では、今後10年間で少なくとも340億ドルを低炭素関連の技術に拠出し、米国経済への資金流入が期待されている。また、米国の新たなインフラ法案により、脱炭素への貢献が加速する可能性がある。

ESGに注力することは、長期的な利益の一致や保有資産のクオリティの高さにつながるだけでなく、リターン源泉をもたらす指針となりうると考える。

サステナビリティを評価する指標を検証してみると、経営陣がESGのリスクと機会を重視している企業は、パフォーマンスが良好であることがわかる。2020年までの10年間でみると、ESG評価が優良な高格付けの上場インフラ銘柄はアウトパフォームしている(下表参照)。このパフォーマンス分析は、MSCIのESG格付けに基づいている。この格付けでは、一定のルールに基づき、企業のESGリスクへのエクスポージャー、および同業他社との比較で、企業がこうしたリスクにどれだけ適切に対処しているかを評価し、業界におけるリーダー(先行者)とラガード(遅滞者)を選別している。

MSCI ESG格付け銘柄の過去10年間のパフォーマンス推移

出所:マッコーリー、MSCI ESG格付け。S&Pグローバル・インフラストラクチャー指数構成銘柄のうち、ESG格付けが投資適格と非投資適格の銘柄の過去10年間(2010年12月31日~2020年12月31日)のパフォーマンスを示している。格付けは2020年12月31日現在のものである。MSCI ESG格付けは、業界にとって重要なESGリスクに対する企業のレジリエンスを長期的に測定することを目的としている。MSCIは、一定のルールに基づき、企業のESGリスクへのエクスポージャー、および同業他社との比較で、企業がこうしたリスクにどれだけ適切に対処しているかを評価し、業界におけるリーダーとラガードを選別している。ESG格付けは、リーダー(AAA、AA)から、平均(A、BBB、BB)、ラガード(B、CCC)に分類される。過去のパフォーマンスは、将来の実績を示すものではない。
 

経済的利益と気候変動対策との一致

景気サイクルの様々な局面において上場インフラ株式資産を運用してきたチームとして、これほど多くの企業が脱炭素化にコミットしている状況は心強い。上場インフラ株式への投資を行なうことにより、(1)サステナブル投資、(2)インフラ資産から得られる、ある程度予測可能なキャッシュフローがもたらす魅力的なトータル・リターン、という2つの長期的な投資テーマへのエクスポージャーを取ることが可能となる。

ただし、脱炭素化はインフラ資産への投資促進につながる長期的な投資テーマの1つにすぎない。あらゆる分野の企業が、既存の資産と新規の資産の両方を気候変動の抑制に貢献できるよう変化させていくことで、社会にとって重要な役割を果たすことができる。多方面における脱炭素化の取り組みへの支援と、技術の向上や資本コストの低下が進めば、投資リスク抑制につながり、ひいてはリターンの予測の確度が高まる可能性があると見ている。

現在の機運は、インフラ資産クラスにとって追い風になると考えている。また、インフラ資産クラスは、サステナビリティとネットゼロ実現の推進力となりうる投資対象であると見ている。